3Dプリンタが壊れた

これまで使っていた3Dプリンタが不調になった。印刷を始めると、対象物が端の方からめくれ上がってしまって形にならない。このような場合、材料を印刷していく台(ビルドプレート)とノズルとの距離を調整すると改善するのだが、今回はだめなようだ。

3年前にAmazonで4万円程度で購入した機種(ANYCUBIC MEGA-s)で、活躍していたが結構不満もあった。ノズルなど消耗品の交換が必要なのだろうと思うが、この機会に更新したくなった。

  • ビルドプレートの傾き調整が手動
    ノズルのZ座標がゼロのとき、ノズル先端とビルドプレートとの距離がA4用紙1枚分の厚さになるように4隅のネジでテーブルの傾きを調整する。この作業に手間がかかる。一旦調整すれば良さそうだが、実際はずれるので時々調整しなければならない。ずれると印刷物が剥がれてしまったり、ノズルがテーブルをこすってしまったり、面倒なことになる。
  • ビルドプレートの傾きが合わない
    プレートが平面で、ノズルがXY平面内で動くなら、プレートの3点の高さを調整することで両者の法線が一致するはずだが、これがうまくいかない。プレートの中央で高さを合わせると四隅が低すぎたり、とにかく気持ちよく合わない。プレートはガラス製なので平面度は高いとすると、ノズルが平面で動かないのではないか。
  • うるさい
    フレームが鉄板の板金加工で、ガイドポストに沿ってテーブルやヘッドが動くのだが、がちゃがちゃ音がする。各部にガタがあるのだろう。

分解した

使える部品をとっておくことにした。ステッピングモーターが5個。Z軸の送りネジは4条ネジだった。リニアシャフトとスライドブッシュ(手前のビニール袋)は、単体部品で購入すると結構な値段になる。精度は不明だけど。


回路基板は使いようもないので廃棄。ボードにTriGorilla_V0.0.2と印刷されていたので、調べると単体でも売っていた。3Dプリンタの制御ソフト(ファームウエア)は改造が盛んに行われているようなので、GitHubにも関連のプロジェクトが複数ある。CPUはAtmelのATMEGA2560(8bit16MHz)だった。

モータドライバはHR4988を使っているようだ。アマゾンで6個1200円。中国製品は自社開発に拘らずパーツを集めて製品にするようだけど、3Dプリンタも同様らしい。お陰でブラックボックス部分が少なくなり値段も下がるのだろう。

分解してみるとネジがやたら多い。あらゆる場所がネジで止めてあるのでM3の6角ボルトが大量に出た。板金加工の本体にパーツをねじで止めるだけ。いわゆる「ネジと馬鹿穴」なので精度を期待するほうが無理な構造だった。これだけのネジを手で外すのはしんどい。6角レンチを切断して6角棒を作り、電動ドライバに付けて使った。

買い替えた

購入したのは ANYCUBIC BYPER 。前と同じメーカーの新しい機種で、値段は前と同程度だった。板金加工ではなくアルミ押し出し材(多分)のフレーム。組み立ても一応フレームの端面を突き当てるので、面精度が出ていれば組み立てによる精度も期待できる構造だ。前の製品に比べるとしっかりした作りに感じられる。

  • ビルドプレートの高さ調整が不要
    ノズル部分にタッチセンサー(ひずみゲージ)が内蔵されていて、自動で高さを調整する。ビルドプレートは固定なので、プレート各部(4x4の16か所)のZ座標を測定して、ヘッドの動きをテーブルに合わせるようだ。
  • 振動が少ない
    アルミ押出材のフレームがそのままガイドになっていて、ベアリング入りのローラーで支持されたヘッドやテーブルがガイド上を移動する。ガタが少ないようだ。
  • 静か
    ステッピングモーターの音が小さい。これは想像だが、モーター加減速の加速度が小さいのだと思う。

角が膨らむ

使ってみると、少し問題を感じた。印刷物の角が少し膨らむのだ。このようなL字部品を印刷すると角が少し膨らんでしまう。以前の機種も同様の傾向があったが、新しい機種はより目立つ感じがする。これは面白くない。


ファームウエアを書き換えた

Webで調べると、コーナーでヘッドの移動速度が遅くなってもフィラメント(インクに相当する材料)の供給速度が変化しない場合、フィラメントの供給が過剰になって膨らむのだそうだ。プリンタ制御ソフト(ファームウエア)を変更すると解消するらしい。手順は次の通りだが、バージョンやライブラリの違いとかいろいろあって、まる1日かかった。

  • GitHubからプロジェクトをダウンロード
  • Platformio環境でコンパイル
  • できたバイナリファイルを入れたSDをセットして電源ON
  • 有志によるオープンソースなので何が起きても自己責任

テストパターンを印刷した。水平に線を引くのだが中央部はヘッドスピードが高い。次の写真はオリジナルのファームウエアだが、中央部が細くなっている。フィラメントの供給がヘッドスピードに対して少ないことが分かる。

次の写真は変更したファームウエアによる印刷結果。加工プログラムは同じだが、中央部が細くなっていない。複数の線は、ヘッドスピードに対するフィラメントの送り速度を決めるパラメタを変更した結果を示す。一定の効果はありそう。

ファームウエア変更後の効果

L字部品の角部分を見ると、完全ではないが効果はあった。左が変更後で右が変更前。

不思議なことだが、メーカーサイトからダウンロードした正規のファームウエアのサイズが400kBで、オープンソースをコンパイルしてできたファームウエアが200kB程度。半分くらいのサイズで、マシンへの書き込み時間も短い。やや心配だが動作に怪しい点はない。ヘッド位置の自動設定も動作する。操作パネルの表示にもおかしな点はないし、バージョン表示も変わりない。本当にファームウエアが書き換わったのだろうかと心配になるほど動作上の違いがない。正規のファームウエアとオープンソースとの関係はどうなっているんだろう。

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